Eyes, JAPAN
あなたのインターネットライフにバーチャルルータはいかが?
Masato Kaneko
みなさんは、「ルータ」というものをご存知でしょうか。
家庭や事務所などに新しくインターネット接続環境を用意したいという場合、「インターネット回線」が必要なのは言うまでもありませんが、その他にも「ルータ」なるものが必要という説明を受けたことがあったり、聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
昨今は、携帯電話網による通信が高速化されてきたこともあり、自宅に固定のインターネット回線を持たず、いわゆる「モバイルルータ」という機器を用いて、通信が不安定だったり、通信容量制限がありながらも、携帯電話網による無線通信でインターネット接続を利用すると言う方もいるかもしれませんが、固定回線かモバイル回線かによらず、「ルータ」という名前がついた機器を利用しているはずです。
自分でそんな機器を用意して使っている覚えはない、という場合でも、NTT などからレンタルされた機器がルータの機能を兼ね備えており、実はそれを利用している、というケースもあり、インターネット接続を利用するほとんどの場合で「ルータ」が必要であることが分かります。
ルータとは何かを簡単に説明すると、光ファイバーなどのインターネット回線を家庭や事務所などに引き込んだ後、その回線を利用して「プロバイダ」と呼ばれる事業者 (の通信設備) に接続する際に用いられる装置です。
インターネットに接続をしたいのであれば、何らかのかたちでプロバイダと呼ばれる事業者と契約することになるので、それに伴ってルータという装置も自ずと必要となってくるのです。
「装置」という書き方をしましたが、この後の話に関連すると、プロバイダに接続する「機能」を持つ装置、と言った方が適切かもしれません。
さて、インターネット接続にはルータが必要ということを書きましたが、ルータとはどんなものでしょうか。
家電量販店などで一般的に目にするものは、ルータという専用の小さな装置 (機械) が多いかと思います。
しかしながら、実はルータというものは、プロバイダに接続する機能を有するものであれば、専用の装置 (ハードウェア) である必要はなく、一般的なパソコンを活用して、ルータとして利用することも可能なのです。
また、少し話は変わりますが、かつてはパソコンやサーバといったコンピュータは、単一の物理筐体の上で単一のシステム (OS) が動作する利用形態が一般的でしたが、コンピュータの性能が大幅に向上したことで、現在では単一の物理筐体の上で複数のシステム (OS) を同時に動作させる「仮想化」という技術が進歩し、それが当たり前のように利用されてきています。
そして、今ではもう最近の話ではありませんが、その仮想化の波はネットワークの世界にも波及し、「仮想ルータ (バーチャルルータ)」なるものも登場しています。
今回は、その中でも Eyes, JAPAN で活用している、高機能ソフトウェアルータ製品の「SEIL/x86」(ザイル エックスハチロクと読みます) を少しご紹介したいと思います。
SEIL/x86 とは
SEIL/x86 とは、株式会社インターネットイニシアティブ (IIJ) が販売する、x86 ベースの高機能ソフトウェアルータ製品です。
SEIL/x86
IIJ 社は、企業向けのハードウェアルータ製品を「SEIL」シリーズというブランドで展開しており、それらの製品と同等の機能を有する仮想マシン形式のソフトウェアルータとして SEIL/x86 を販売しています。
SEIL/x86 の特徴
SEIL/x86 は、仮想マシン形式で提供されるソフトウェアルータであり、従来の一般的なルータの概念を超えて活用できることが大きな特徴です。
従来の一般的なルータの場合、ルータが必要となった際には、必要な台数分のルータを物理的な機械として調達する必要がありますが、SEIL/x86 を利用すると、例えばひとつの物理サーバを用意して、その中に必要な台数分のルータ (SEIL/x86) を仮想マシンとしてセットアップして利用することが可能になります。
動作要件も低いので、一般的なパソコン上で動作させることもできますし、クラウド環境に SEIL/x86 をセットアップして遠隔地からアクセスして利用することも可能です。
私が SEIL/x86 を特にお勧めする理由
私が SEIL/x86 を特にお勧めする理由を以下に挙げます。
- IIJ 社により販売される商用ソフトウェア製品であり、よくメンテナンスされている
- サポート体制が充実しており、修正や機能追加が行われる期間が長い
- 公式のドキュメントが充実している
- 有料製品なものの、ダウンロードは無料、ライセンスキーは非常に安価 (800円)
- 動作要件が低く、リソース消費量が少ない (CPU 1 コア、メモリ容量 512MB 以上、消費ディスク容量 32MB)
- 業務用として活用できるほど高機能・高性能
ルータというものは、インターネット接続という重要な役割を担う性質上、長期的に安定して稼働することが求められます。
ここでいう「長期的に安定して稼働すること」には、不具合による問題がなるべく起きないことはもちろんですが、セキュリティ更新を含むバージョンアップが長期間提供されることや、機能の互換性が長期的に維持されることも含んでいます。
SEIL/x86 は、2011 年 4 月に販売開始され、それから 8 年が経過する 2019 年の現在も継続してバージョンアップサポートが行われています。
ソフトウェアルータには、SEIL/x86 以外にコミュニティベースの OSS もいくつか存在していますが、上記の理由から、業務での利用はもちろん、家庭での利用にも SEIL/x86 を特におすすめします。
Eyes, JAPAN での利用事例
Eyes, JAPAN では、以下に挙げる用途で SEIL/x86 を活用しています。
- 事務所とクラウド環境を繋ぐ拠点間 VPN における、クラウド環境側のゲートウェイルータ
- 来訪者向けネットワークのインターネット接続用ルータ
まず、一つ目の用途では、Eyes, JAPAN での業務上、非常に重要な役割を果たしています。
というのは、業務で日常的に利用されるサーバがクラウド環境内で動作しており、事務所とクラウド環境の間のすべての通信を SEIL/x86 が中継しているためです。
事務所とクラウド環境との間は、IPsec による VPN で常時接続しており、事務所側はハードウェアルータ (NEC UNIVERGE IX2105) が、クラウド環境側は SEIL/x86 がゲートウェイを担っています。
クラウド事業者側での障害に備え、クラウド環境側は東京と大阪の 2 箇所に SEIL/x86 のゲートウェイとサーバをそれぞれ配置し、簡易的な冗長構成で運用しています。
今年の 4 月からこの構成での運用が始まり、現在はそれから数ヶ月が経ちますが、非常に安定して稼働しています。
続いて、二つ目の用途ですが、Eyes, JAPAN では事務所に来訪されるお客様に対して、主に無線 LAN (Wi-Fi) によるインターネット接続を提供しており、そのゲートウェイを担う部分のルータとして SEIL/x86 を利用しています。
SEIL/x86 が担っているのは、利用者の方々の端末に IP アドレスを自動で設定するための DHCP 機能と、インターネット上のホストと通信ができるようにするための NAPT 機能です。
SEIL/x86 の採用を決めたのは、来訪者向けネットワークの提供を検討していた頃の話になります。
来訪者向けネットワークは、セキュリティを考えると、スタッフが業務で利用するネットワークとは完全に分離された、独立したネットワークを用意する必要があります。
そのためには、ルータが必要となってきます。
しかしながら、業務用のハードウェアルータは、高性能・高信頼なため、民生品とは違い、数千円といった安価な価格で手に入るものではありません。
毎日利用されるわけではない来訪者向けネットワークを準備するために、高価なハードウェアルータを購入する予算を要求することはあまり現実的ではありませんでした。
そういった状況の中、SEIL/x86 の存在を知り、来訪者向けネットワークの提供に必要な機能要件を満たしていることと、その価格が非常に安価なため、この度の用途として最適なのではと思い、さっそく検証利用をしてみました。
すると、機能・性能ともに業務用のルータと遜色なく、安定した品質の良いネットワークを提供できることが確認できたので、正式に採用して運用開始したのがその始まりです。
SEIL/x86 を利用して来訪者ネットワークの提供を始めてから、現在までで 5 年ほど経ちますが、トラブルは一度もなく、こちらも非常に安定した運用を継続することができています。
さいごに
インターネットは、皆さんも身近に、そして日常的に利用していると思いますが、今回の記事では、インターネット接続を利用するために必要不可欠な存在であるルータに注目していただきました。
そんなルータですが、技術が進歩し、今や仮想ルータ (バーチャルルータ) と呼ばれる便利なものが存在しています。
ハードルが高いと思われてしまうかもしれませんが、Eyes, JAPAN で実際に利用している事例をご紹介することで、皆さんの何かの参考になれば幸いです。