医療コラム
耳の構造
Shota Oikawa
来週には芒種を迎え、梅雨入りも間近な今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。私はいつもと変わらず元気です。
最近雨の日が多いですよね。雨音には 1/f ゆらぎが含まれており、リラクゼーション効果があるとかないとか。そんな雨音に耳を傾けていると、我々はどのようにして音を知覚しているのかと、ふとそう思うことはないでしょうか。ありますよね。ということで今回は、私達の人生に世界の鼓動を織り込んでくれる、耳についての記事です。
耳の役割
耳の役割をざっくりと説明すると、外界から音を拾い周波数分解して脳に送る、です。結構シンプルだと思います。
この処理を耳がどのように行っているかを見ていくと、結構すごいなと感じると思います。以下のほとんどの内容がカンデル神経科学の”第30章 内耳”を参照しています。
耳のパーツ
耳は外耳、中耳、内耳の3つの部位に分けることができます。それぞれの役割は以下のようになります。
- 外耳:音を集める
- 中耳:受容器官に送る
- 内耳:神経系での解析に適した電気信号に変換する
外耳
普段、私達の目に見えている、耳と呼んでいる部分が外耳にあたります。
耳介と呼ばれるそれは、複雑に折りたたまれた軟骨と皮膚からなります。耳介は反射体として音を効果的にとらえ、外耳道へと集める働きをもちます(カンデル神経科学 p.647 参照)。パラボラアンテナを想像すると分かりやすいと思います。
この耳介の集音効果は、音が頭に対して特定の位置からくるときに最も高いとされています。音源の空間上の位置、特に垂直方向の位置を特定する際に重要になってきます。
中耳
中耳は空気の入った腔であり、耳管により咽頭とつながっています。咽頭はこの画像を参照してください(小さいのでクリックして拡大していただけると見やすいと思います)。
音は鼓膜の振動とともにツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の3つの耳小骨の振動として中耳を通過していきます。
ツチ骨は片方が鼓膜に付着しており、もう一方は靭帯によりキヌタ骨と連結しています。
キヌタ骨のもう片方はアブミ骨と連結しています。
アブミ骨の底部(アブミ骨底)は平坦で、骨で囲まれた蝸牛にある卵円窓と呼ばれる穴に挿入されています。
内耳
私が一番興味をもった部位が内耳です。内耳はかたつむりのような形をしている蝸牛からなります。蝸牛は円錐形の骨の周りを囲む、直径が徐々に小さくなる螺旋状の構造をしています。その大きさは約 9 mm 程度です。
蝸牛の内部は液体で満たされた前庭階、鼓室階、中心階の3つの部屋に分かれています。前庭階と鼓室階は蝸牛管体によって隔てられています。
- 前庭階:蝸牛底側で卵円窓として中耳に開窓し、アブミ骨底によって閉じられている
- 鼓室階:蝸牛底側で正円窓として中耳に開窓し、薄い弾性膜で閉じられている
- 中心階:蝸牛管体の中にある
この蝸牛が、音を周波数分解しているとても重要な部位となっています。
蝸牛の周波数分解
音の周波数分解に重要なのが基底板です。基底板は中心階と鼓室階を隔ています。ちなみに中心階と前庭階を隔てているのはライスナー膜(前庭膜)です。この基底板には音を電気信号に変換する複雑な構造が存在します。
基底板の幅は底部に比べて頂部で5倍以上広くなっています。そして、頂部では柔らかく、底部では厚く堅くなっています。つまり、頂部では固有振動数が低く、底部では固有振動数が高くなります。基底板のこの性質があるため、各周波数は基底板の固有の位置で最大の振幅を生じることになります。
そしてこの基底板の固有振動数の分布は、基底膜上でほぼ対数的になっています。ここはとても面白いなと感じてます。
要するに、100 Hz では基底板の頂部付近で最大の振幅なります。1,000 Hz は基底板の中央付近、10,000 Hz は基底板の底部付近で最大の振幅になります。
このようにして、耳は集めた音を周波数分析しています。
最後に
最近、興味のある分野が神経科学や生物学寄りになってきているので、コードをあまり書けていないことに焦りを感じてますw
より詳しく知りたい方は、是非カンデル神経科学を手にとって見てください。世界が変わると思います。
参考文献
耳の画像:http://www.widexjp.co.jp/hearing/mechanism/ear-mechanism.html
咽頭の画像:https://pekingdo-baba.blogspot.jp/2014/10/blog-post_22.html
蝸牛の画像:https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1720
蝸牛の断面の画像:http://www.memai-pro.com/ear/function.htm