ネットワーク
快適な無線LAN環境を実現するための3つのポイント
Masato Kaneko
背景
昨今は、スマートデバイスの急速な普及により、モバイルアクセスが一般化し、それに伴って以前よりも無線LAN環境の必要性が高まってきています。
それは、私個人の感覚だけではなく、客観的な数字にも現れてきています。
総務省の 「平成29年版 情報通信白書」によると、スマートフォン保有率は2011年に14.6%であったものが、2016年には56.8%と5年間で4倍に上昇し、スマートフォンが爆発的に普及したことを裏付けています。
また、モバイルによるインターネット利用時間(平日1日あたり)を2012年と2016年とで比較すると、全体で38分から61分と1.6倍に増加しています。
このように、スマートフォンやタブレット等の無線LANを搭載した携帯端末の普及を背景として、無線LANを利用する機会が増えており、無線LANは、家庭、オフィス及び公衆スポットにおける快適なワイヤレスブロードバンド環境の実現のために必要不可欠な存在となっています。
しかしながら、家庭やオフィス、また外出先の商業施設、公共施設、宿泊施設、学校などでは、快適な (安定し、不満なく利用できる) 無線LAN環境は整備されていますでしょうか。
今回は、快適な無線LAN環境を実現するために必要なポイントを紹介したいと思います。
快適な無線LAN環境構築のポイント
快適な無線 LAN 環境の実現に向けた構築ポイントは、次の 3 つが挙げられます。
- 2.4 GHz 帯の提供は縮小化し、5 GHz 帯を主体としたサービス提供にシフトする
- ルータ機能と無線 LAN 機能は兼用させず、機能や接続台数に応じた適切な製品を選定し、利用する
- 原則的に、無線 LAN を利用する空間毎に無線 LAN アクセスポイントを設置する
それぞれのポイントについて、詳しく説明していきたいと思います。
2.4 GHz 帯の提供は縮小化し、5 GHz 帯を主体としたサービス提供にシフトする
これには、以下の 2 つの理由があります。
- 2.4 GHz 帯の電波干渉による問題
- 5 GHz 帯の電磁波特性の利点
2.4 GHz 帯の電波干渉による問題
2.4 GHz 帯は、無線 LAN のみならず、家電製品でも一般的に利用されている周波数帯です。
有名なものには、電子レンジ、無線マウス、コードレス電話機、Bluetooth 製品、ワイヤレスヘッドホンなどがあります。
これらの機器は、無線 LAN と同じ 2.4 GHz 帯を利用して通信しており、無線 LAN で通信を行う機器の近くにこれらの機器があると、通信速度が低下したり、通信が切断されたりなど、無線 LAN 通信に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、他の無線 LAN 機器にも注意が必要です。
現在では、スマートフォンやタブレットによるテザリング機能、ノートパソコン、携帯ゲーム機、モバイルルータなど、無線 LAN アクセスポイントと同じ振る舞いをするモバイル機器が広く普及しています。
2.4 GHz 帯は、近接地で同時に利用することのできる周波数帯 (「チャンネル」といいます) がもともと非常に少なく、それに加えて上記のような家電製品や他の無線 LAN 機器など、通信に悪影響を及ぼす外的要因が多いため、安定した通信環境を維持することが難しいのが現状です。
5 GHz 帯の電磁波特性の利点
無線 LAN では、2.4 GHz 帯と 5 GHz 帯の二種類の周波数帯の電磁波が利用されるのが一般的です。
代表的な無線LANの規格である IEEE802.11 諸規格を簡単にまとめました。
これらの二種類の周波数帯の電磁波は、それぞれ特性が異なります。
それぞれの特性をメリットとデメリットというかたちで簡単にまとめました。
5 GHz 帯の電磁波には、デメリットとして「遮蔽物に弱い」という特性があります。一般的にはデメリットなのですが、これを逆に解釈すると、メリットにもなり得ます。
無線 LAN を利用したい空間 (部屋など) の外から飛んでくる 5 GHz 帯の電磁波は、その空間を遮る壁や家具などの障害物によって減衰しやすいため、空間外の要因から受ける影響を少なくできると考えられます。
それに対して、2.4 GHz 帯の電磁波は、波長が長く、5 GHz 帯の電磁波と比べ遠くまで届きやすいので、外的要因による影響を受けやすいと言えます。
以上の理由から、2.4 GHz 帯の提供は縮小化し、5 GHz 帯を主体としたサービス提供にシフトすることで、外的要因による影響を少なくできるため、無線 LAN 環境の安定化に繋がるのです。
加えて、最近では 5 GHz 帯に対応した無線 LAN 機器も増えており、2.4 GHz 帯の提供を縮小化することによる影響も、徐々に少なくなっていくでしょう。
ルータ機能と無線 LAN 機能は兼用させず、機能や接続台数に応じた適切な製品を選定し、利用する
皆さんは、いわゆる「無線 LAN ルータ」や「無線 LAN ブロードバンドルータ」と呼ばれる製品が量販店等で販売されているのを見かけることも多いのではないでしょうか。
これらの機器は、一般家庭でもすぐに使い始められるように、ひとつの機器の中で「無線 LAN 機能」と「ルータ機能」を兼ね備えているのが一般的です。
業務用途では、それらの機能は「無線 LAN アクセスポイント」と「(有線) ルータ」という、それぞれ異なる専用の機器で実現します。
専用機器のため、機能に対する処理効率が高く、それぞれの機器で高度な設定が可能になっていたり、高性能化されていたりします。
逆に、家庭向けの無線 LAN ルータのように、単一の機器が二つの機能を兼用しているということは、それぞれの機能に十分な処理能力が割り当てらない可能性もあるため、必然的に機器の利用効率は落ちてしまいます。
また、同時接続可能台数 (同時処理可能台数) という観点で見ても、家庭向けの無線 LAN ルータやブロードバンドルータというものは、多くても一家族分の人数が利用する程度 (5, 6人程度) の処理性能しか有していません。
そういった特徴を持つ家庭向けの無線 LAN ルータを用いて、数十人や数百人、さらにはそれ以上の数の利用者が想定されるような規模で、安定した無線 LAN 環境を実現しようとすることは現実的だと言えるでしょうか。
また、ポイント 1 で説明したように、無線 LAN 用途で利用可能な周波数帯にも限りがあるため、なるべく少ない数の無線 LAN アクセスポイントで多くの人数 (機器) を収容する方針でないと、電波干渉による問題が避けられません。
したがって、規模や用途によってそれ相応の性能を有している製品の利用が必要不可欠なのです。
原則的に、無線 LAN を利用する空間毎に無線 LAN アクセスポイントを設置する
無線 LAN は、周波数帯により多少の違いはあれど、障害物の影響を受けるという特性があります。
これはすなわち、電波干渉の問題を抜きにしても、壁を超えた先にある隣の部屋に設置されている無線 LAN アクセスポイントに接続して利用する場合の品質は、多かれ少なかれ遮蔽物の影響を受け、同一空間内に無線 LAN アクセスポイントが設置されている場合 (間に障害物がない場合) の品質には及ばないことになります。
他の無線 LAN アクセスポイントによる電波干渉の問題がある場合や、物理的に設置できないケースなど、様々な理由により無線 LAN を利用する空間毎に無線 LAN アクセスポイントを設置できないケースは十分に有り得ますが、改善策の考えを色々と巡らせた後、原則論に立ち戻って考えた方がうまくいくという場合もあります。
なので、通信品質上は無線 LAN を利用する空間毎に無線 LAN アクセスポイントが設置されるのが理想である、という大原則は頭の片隅に入れておくのが良いでしょう。
この原則どおりに無線 LAN アクセスポイントを設置すると、数が多すぎて (密集しすぎて) しまったり、逆に広大な空間では、広さや収容人数に対して数が少なすぎてしまうこともあります。
その場合は、適宜そこから減らしたり増やしたりする要領で調整していく必要があり、その最適なバランスを見出すことが、快適な無線 LAN 環境構築のもっとも難しいポイントとなります。
最後に
快適な無線 LAN 環境の実現に向けた構築戦略のご紹介は以上になります。
電波干渉の問題を踏まえると、なるべく少ない数の無線 LAN アクセスポイントで多くの人数 (機器) を収容するのが理想であったり、通信品質を踏まえると、無線 LAN を利用する空間毎に無線 LAN アクセスポイントが設置されるのが理想であったりと、同時に満たすことができない複数の条件を考慮に入れる必要があるのが、快適な無線 LAN 環境構築の難しい点です。
さらに、利用場所の状況によって正解はひとつに定まらないというのも、問題を難しくしています。
しかしながら、ご紹介したような戦略を拠り所の一つとして、色々と調査や検討、検証を重ねていくことで、着実に無線 LAN 環境の安定化に近づいていくことはできるので、実情に即した改善策を模索していきましょう!
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