開発
対話的進化計算について
Kento Higuchi
初めまして、会津大学学部2年の樋口と申します。
最近、進化論的計算というものを知り、
「この原理を利用してwebデザインの支援システムを作ったら面白いのではないか?」、
と思い立ち、目下勉強している最中でございます。
このブログの読者の皆様にもその可能性の一端に触れていただきたい、ということで、
この記事では、進化論的計算の一種であり、デザインや芸術、発想支援システムへの
応用が期待される対話的進化計算(Interactive Evolutionary Computation, IEC)を
簡単に取り上げます。
なお、対話的進化計算の基礎となっている
進化論的計算の仕組みについては、こちらを参照願います。
適応度を人間に評価させる
進化論的計算では、それぞれの個体の評価(適応度)を計算することは重要なプロセスの一つです。
しかし、適応度の計算が一筋縄ではいかないことがあります。
例えば、部屋の雰囲気に合った家具をデザインするときは、
そのデザインがどれくらい部屋の雰囲気にマッチしているか、というのが適応度になりますが、
これは多分に人間の主観に拠ったものなので、コンピュータに計算させるのは
とても難しいものとなります。
そこで、適応度の評価をユーザーに直接行わせることで、
人間の主観に沿った最適化を可能にしたのが
対話的進化計算(IEC)となります。
下図は、IECの一種である
対話型遺伝的アルゴリズム(interactive Genetic Algorithm, iGA)のフローチャートです。
この図の青い枠で囲われているのが、人間が直接評価を行う部分です。
実践IEC(進化論的作曲など)
IECの応用例としては、MIDIを用いたジャズの即興演奏システムである
GenJam(http://igm.rit.edu/~jabics/GenJam.html) が有名です。作曲にIECを用いることで、
音楽に対する詳細な知識がない人でも、「そのメロディが好きか嫌いか」といった
漠然としたイメージを手掛かりに好みの楽曲を作ることができます。
また、IECによって短文などを作るシステムも開発されています(こちらを参照)。
最後に
この記事では、対話的進化計算(IEC)について簡単に紹介しました。
対話的進化計算を利用したシステムにおいて、成果物の適応度はユーザーによって決まります。
この意味において、システムとユーザーは一体化していると言えます。
またIECによる創作支援システムを使用するユーザーは、突然変異などによって
自らの創造性を刺激されながら創作することができます。
読者の皆様にとって、この記事が発想のヒントとなりましたら幸いです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
参考文献など
この記事の内容は、以下の書籍を参考に執筆致しました。この場をお借りしてお礼申し上げます。
- 進化計算と深層学習,伊庭斉志著,オーム社(2015)
記事中の図は、以下のサイトより転載致しました。