医療コラム
無過失補償制度~日本での現状~
meguro
今日は無過失補償制度と産科補償制度について紹介します。「無過失補償制度」というのは、医療事故で障害を負った場合、医師に過失がなくても患者に補償金が支払われる制度を指します。日本では無過失補償制度が医療分野全体で確立していませんが、「産科補償制度」といって現在、産科医療のみで補償制度が行われています。
無過失補償制度はどういった点で利点があるかというと、訴訟リスクを恐れた委縮医療の問題を緩和するのではないかと言われています。委縮医療というのは、医師が懸命に手を尽くしたという手術であったとしても訴訟を起こされてしまうことを言います。産科医は特にリスクが高いため2009年の1月に制度が導入されました。日本では産科という分野でしか制度が確立していませんが、海外先進各国では訴訟リスクのもたらす委縮や弊害を考え、アメリカ型・フランス型・スウェーデン型と各国の諸事情に合わせて制度が設けられています。
日本では、未だにデバイスラグの問題を抱えています。2010年9月に九州大学病院に入院中の重症心不全患者が、補助人工心臓の管が外れて意識不明の重体になり、その後亡くなってしまいました。使用されていた補助人工心臓は製造承認が20年前の「国立循環器センター型」で、博物館に入るような製品という意見が出ました。
こういったデバイスラグの要因は日本に無過失補償制度などの免責制度がないからだと言えます。患者は、重篤な後遺障害に苦しみながら更に訴訟しなければ十分な補償がされません。また、医療機器メーカーなどは医療過誤訴訟や製造物責任訴訟といったリスクがあるため、開発や輸入に積極的になれないという点もあります。
日本では、先進医療という分野がありながら制度がまったく追いついていません。無過失補償制度は医師と患者の双方に利点がある制度だと思います。民主党では2012年度に新制度の開始を目標にしています。今後も、この問題について注目したいと思います。