例えば、全員で一緒にどこかへ行かなければならないとき、「自分以外の人が全員立ち上がったら、自分も行こう」と考えている人はいないでしょうか。
自分が早く立ち上がってしまうと、最後の人が席を離れるのを待たなければならなくなります。
そうした時間のロスを最小限に抑えるための方法として、最後に立ち上がるという選択は、合理的に思えるかも知れません。
しかし、自分以外にもう一人、同じことを考えている人間がいた場合、双互に相手が立ち上がるのを待つというデッドロックに陥ってしまいます。
そうして行動の開始が大幅に遅れ、さらに多くの時間を無駄にしてしまった、というような経験をしたことのある人も少なくないはずです。
このように、個々のレベルにおいて最適な行動を選択した結果、全体としてより大きな損失を招いてしまうことを、経済学では合成の誤謬と言うそうです。