思考・考察
裏の裏は表
beko
私が思うに、愛情の反対は無関心ではなく、やはり憎悪なのです。
その理由は、「反対の反対」を考えてみるとはっきりします。
「a の反対は b」であるならば、同時に「b の反対は a」でもあってほしいものです。
「反対」という言葉が厳密にこのように定義されているわけではありませんが、少なくとも私たちの直観※1と一致するはずです。
「愛情の反対は無関心である」ならば、「無関心の反対は愛情である」はずなのですが、これには違和感を覚えます。
関心が「無い」ことが無関心なのですから、その反対は関心が「有る」ことに他なりません。
言葉遣いに囚われず、マザー・テレサがこの言葉に込めた意味を汲み取ることは難しくありません。
簡潔な分だけ、この言葉はより正確に彼女の意思を伝えているとも思います。
ですが同時に、言葉の意味を正確に解釈することも重要です。
それを欠いてしまえば、私のようなヒネクレ者からツッコミを受けるばかりか、より説得力の劣る主張を垂れ流すことにもつながりかねないからです。
余談ですが、「反対」という関係が持つ、「aはbの反対 ならば bはaの反対」という性質は、集合論では「対称律(symmetry)」と名付けられています。
他の性質には、
「反射律 (reflexivity): 常に a は a の (と) ○○である」、
「推移律 (transitivity): a は b の (と) ○○ かつ b は c の (と) ○○ならば a は c の (と) ○○」
などがあり、反射律・対称律・推移律をすべて満たす関係を「同値関係」※2といいます。
同値関係の持つ重要な性質に「集合を互いに素な部分集合 (同値類) に分類する」というものがあり、同値関係はグラフとして表すことができ、同値類の管理を行う、すなわち集合に対する2つの操作「要素 a と b が同値であるとみなす」「要素 x と y が同値であるかどうか判定する」を行うためのUnion-find※3というそれはそれは美しいデータ構造があるのですが、その話はまたいずれ。
※1 直感ではありません。
※2 「2つの整数の『等しい』」「2つの三角形の『合同』」などがこれにあたります。
※3 Disjoint Setと呼ぶ人もいます。私はDisjoint Set派です。
担当:田山(余談があからさまに余談ではない)