イベントレポート
シンギュラリティシンポジウムで感じた未来 – 今後30年のAI(人工知能)をリードする若い力への期待
yahata
こんにちは。CTOの八幡です。7/16(土)に大阪で行われたシンギュラリティシンポジウムに参加してきました。弊社でもAI技術を用いたプロジェクトを進めており、AI技術の将来には大きく注目しています。シンギュラリティへの具体的な道筋を見据えながら感想をまとめてみたいと思います。
今回のシンギュラリティシンポジウムは、パネルセッションのテーマ「本当に日本からシンギュラリティを起こせるのか?」からも分かるように、日本からシンギュラリティを起こす気概(と能力)を持った方々が集まるシンポジウムでした。主催はシンギュラリティサロン。弊社代表の山寺もサロン発起人のひとりであり、弊社からもボランティアスタッフ3名と共に参加してまいりました。シンポジウムは大盛況で、懇親会も一瞬で席が埋まってしまい増枠されるほどの盛況ぶりでした。
講演の内容は、下記の通り。
- 「AIコールセンターによる未来」 石田正樹(株式会社エーアイスクエア 代表取締役)
- 「ウェアラブルの未来」塚本昌彦 (神戸大学工学部教授)
- 「日本からシンギュラリティを起こそう」松田卓也(AI2オープンイノベーション研究所所長、神戸大学名誉教授 )
- 「次世代を生きる僕たちが創るもの」 佐久間洋司 (人工知能研究会(AIR) 代表)
- 「エクサスケーラーからプレシンギュラリティへ」 齊藤元章 (株式会社PEZY Computing 創業者・代表取締役社長)
- パネル討論 テーマ「本当に日本からシンギュラリティを起こせるのか?」 パネリスト:栗原 潔 (文部科学省 研究振興局参事官 [情報担当] 付専門官) および、松田卓也、石田正樹、塚本昌彦、佐久間洋司、齊藤元章 (以上、登壇順)
松田氏や齊藤氏はじめ、日本の人工知能界をリードする方々ばかりです。
シンギュラリティとは?
シンギュラリティとは、日本語で「技術的特異点」とも呼ばれ、人工知能が人間の知能を超越するタイミングを指します(シンギュラリティの定義には諸説ありますが、一般的には概ねこの定義が浸透しているように思います)。現Googleエンジニアリングディレクターのレイ・カーツワイル氏によって唱えられた概念だと言われています。
カーツワイルの予測によると、シンギュラリティが起こるのは今から約30年後の2045年。氏の著書「シンギュラリティは近い」では、シンギュラリティへの道筋が定量的な事実に基いて語られており、その衝撃は世界中でシンギュラリティに関する議論を巻き起こしました。人工知能が招く技術的失業の問題など、みなさんも聞いたことがあるのではないでしょうか。
シンギュラリティがもたらす希望と恐怖
シンポジウムの中では、シンギュラリティの到来が人類にもたらす希望についても語られました。そのひとつがグランドチャレンジ(Grand Challenges)です。グランドチャレンジとは、食糧問題やエネルギー問題といった地球規模の問題を指します。AIの能力が進化していくことで、こうした地球規模の問題を解決することができるようになるのです。
しかし、それと同時に世界的な格差が広がる可能性も示唆されました。シンギュラリティに向けて起こる人工知能革命は、農業革命や産業革命に続く世界規模の革命になるとも言われています。駒沢大学の井上智洋氏の話を引き合いに出しながら、人工知能革命がもたらす大分岐についても語られました。
シンギュラリティへの具体的な道のり
人工知能がシンギュラリティにたどり着くためには、ハードウェアとソフトウェアの両方の進化が必要となります。このハードウェアを担うのがスパコン。ソフトウェアを担うのがマスターアルゴリズム(The Master Algorithm)です。
まず、ハードウェアを担うスパコンの開発をリードするのが、PEZY Computing代表の齊藤氏です。スパコン開発ベンチャーとして有名な同社ですが、現在はスパコンのみならずAI専用エンジンの開発にも取り組んでいるということです。講演の中では、このAI専用エンジンを1年半で製品化するというスケジュールも示され、このアグレッシブな性能仕様には特に驚かされました。
一方、ソフトウェアを担うマスターアルゴリズムとして現在有力視されているのが、HTM(Hierarchical Temporal Memory)とPredictive Codingです。シンギュラリティを達成するためにはAGI(汎用人工知能)を作る必要があり、このAGIの基礎となるアルゴリズムがマスターアルゴリズムと呼ばれています。このマスターアルゴリズムの実現に向けて、人工知能研究会(AIR)や全脳アーキテクチャイニシアティブ、全脳アーキテクチャ若手の会、不敵塾といったグループが動き出しています。
- Hierarchical Temporal Memory を学ぶ – 第二思考実験室
- 超緊急! 全脳アーキテクチャ研究ハッカソン ーDeep PredNetを動かそう:標準新皮質モデルは実装しうるか?ー – 全脳アーキテクチャ勉強会 | Doorkeeper
弊社で進めている取り組み
現在、弊社ではAI技術について2つの側面から取り組みを進めています。
1点目は、AI技術を利用したプロジェクトの推進です。こちらは以前ブログ記事にもまとめておりますので、よろしければ是非ご覧ください。
2点目は、マスターアルゴリズムとして有力視されているHTMの実装です。これはどちらかというとR&D色の濃いプロジェクトですが、弊社の得意とするプログラミング技術を活かし、HTM理論をコードに実装しながら実世界での応用可能性を探っています。既にNumenta社はじめ各所からオープンソース実装が公開されてはいますが、それらの実装にはマスターアルゴリズムとしては欠けている部分がどうやらあるようです。実装を進めながらHTM理論の発展にも寄与していけたらと考えています。
弊社から参加した学生ボランティアスタッフの感想
参加した弊社学生スタッフからも簡単に感想をいただきました。色々と刺激を受けることができたようです!次に繋げていきたいですね。
私は、自分の中で「シンギュラリティ」をどう捉えるべきなのか、よくわかりません。シンギュラリティは近く来るかもしれませんが、どんなことがどのような規模で起きるのか、という予想は研究者によっても大きく違いますし、中には想像を絶するものもあります。人類にとってあまりにも大きなパラダイムシフトになる可能性があるため、起こってみないとわからない、という感情が私の中にはありました。それは今回シンギュラリティシンポジウムに参加しても変わりませんし、登壇された方のなかにもそのような方はいたように思えます。しかし、私はそれを通してひとつ理解したことがありました。「わからないからといって、行動することを後回しにするわけにはいかない」ということです。そこにいらっしゃった方は皆、「シンギュラリティ」という言葉を前にして何かしらの危機感を抱いていたようでした。アメリカや中国に主導権を渡すわけにはいかない、大人に任せっきりにするわけにはいかない、そういった危機感を感じ、その危険を回避するためにどうすればよいか考えていました。シンギュラリティが教科書に乗る、大きな出来事となることは間違いありません。その実態はまだほとんど霧の中ですが、私達には準備すべきことが多くある。そういったことを考えることができたシンポジウムでした。(会津大学学部2年 伊藤)
来たるべき未来であるシンギュラリティについて、登壇者の皆様が思い思いの展望を語って頂くことにより、少しだけですが将来像が開けたと思います。個人的には松田先生のパートでHTMについて触れた際、錯視や認知バイアスをも再現していたことがとても印象的で、私の脳に大きな電気ショックが加わったような感覚を覚えています。ただ、学生ボランティアとして参加していながら、そのアドバンテージを活かすことなく、一オーディエンスとしての振る舞いしか出来なかったことは後悔が残ります。次の機会では、より積極的に振る舞うことを心がけたいと考えています。(会津大学学部2年 樋口)
凄いものになると想像すら難しいようなお話もありましたが、スピーカーの皆さんのユーモアのあるプレゼンテーションのおかげで十分なきっかけを得られました。「良い体験」と聞いて、皆さんはどんなものを想像しますか。私にとってのそれは「悔しさ」です。今回のシンポジウムでも知識の欠如や周りの技術者との温度差などを実感して、いろいろな場面で悔しい思いをしました。私の先輩も人工知能研究会(AIR)代表 佐久間洋司さんの活動を知って、自分と同じ大学生なのにと悔しそうな様子でした。近々AIRの皆さんと合同で勉強会を行うことになりました。今回の悔しさを本当の意味で良い体験にし、次はまた別の刺激を受けられるよう努力します。(会津大学学部1年 佐々木)
まとめ
「人工知能が人間を超越する」と聞くと、一般的にはSFや映画の中の話として捉える人がまだまだ多いと思います。しかし今回のシンポジウムでは、実際に日本からシンギュラリティを起こす気概を持った方々が登壇されており、かなり現実味のある話として捉え直すきっかけとなりました。
また、全体を通して感じたのは「若い人への期待」です。シンギュラリティが起こると言われている2045年に向けて、これからAIをリードしていくのはまさに今の若い人たちの世代なのです。
弊社では、これからのAIをリードできる人材を募集しています。ご興味がありましたら、ぜひフォームからお問い合わせくださいませ。
担当:八幡(ポケモンGOが楽しみ)